檸檬爆弾の意味

 梶井基次郎の小説『檸檬』の最後に、積み上げた画集の上に檸檬を置いたままにして、丸善を出ていくという場面があり、語り手は、その後檸檬が大爆発をする想像をします。その意味について考えてみました。

 私は、「爆弾に見立てた檸檬をそのままにして丸善を出る」という行為は、「小説の『檸檬』を発表して、他の人に読んでもらう」ことのメタファー(隠喩)だと考えます。そして「大爆発」は、小説を読んだ読者が新しい美意識に気づくことだと考えます。根拠は、「変にくすぐったい気持ち」という表現です。この表現は、他人の視線を意識していることによる表現だと考えるのです。

 『檸檬』の発表直後は、「大爆発」にあたるような反響はなかったようですが、今でも高校の現代文の教科書に収録されているので、「じわじわと長く燃え続けている」ような作品だと思います。