『メディア不信』(岩波新書)を読んで

 『アレント入門』を読んだ後、全く関係が無いと思っていた『メディア不信』を読んでいたら、アレントのことが書かれていてびっくりしました。(以下、抜粋)

 哲学者ハンナ・アーレントは、主著『人間の条件』で、政治を、言葉と行為による「公的な営み」と位置付けている。その際「公的」とは、「万人によって見られ、聞かれ、可能な限り最も広く公示される」現象であり、「私たちすべての者に共通するもの」であるとし、政治こそ、平等で対等な市民によって公共の領域で行われるべきだと論じている。
 しかし、ソーシャル・メディアの発達で、政治は万人によって見られ、聞かれ、公示されるどころか、薄暗がりから操作され、攪乱される状態に置かれている。この薄暗がりには拡声器もなければ、熱狂する聴衆もいない。政府によって検閲されたラジオやテレビも存在しない。人々の平凡な暮らしが営まれているプライベートな空間から徐々に情報が引き出され、束ねられ、政治利害のために再編されて利用される。