2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

庶民食堂♡ 『おとなの味』(平松洋子)『探石行』(つげ義春)

平松洋子さんのエッセイ集『おとなの味』に、富士吉田にある庶民的なうどん屋さんのことが書かれています。(以下、抜粋) 残りが二、三本になったところで、ふと正気に戻った。ひと息ついて視線を上げると、座敷の正面にりっぱな仏壇。床の間にこどもの習字…

ジェンダーバイアス(9月30日「読売新聞」)

本日の読売新聞の書評欄に『ワークデザイン』という本が紹介されていました。副題は「行動経済学でジェンダー格差を克服する」。(以下、抜粋) オーケストラの楽団員選考では、かつて、女性が受かる率はとても低かったという。しかし、演奏家と審査員の間に…

老いの豊かさ(9月29日「朝日新聞」)

本日の朝日新聞の第2面「ひと」というコーナーで、「老いと演劇」を考える体験型講座を始め、参加者らと2014年に劇団を設立した菅原直樹さん(35)が紹介されています。介護施設で働いた経験を元にした菅原さんの言葉、(以下、抜粋) 「物忘れが多くなり、…

ハードボイルドとは(9月29日「朝日新聞」)

本日の朝日新聞の書評欄、「著者に会いたい」のコーナーに、ハードボイルド作家である大沢在昌さんのインタビュー記事が載っていました。大沢さんの言葉が印象的なので、一部抜粋しておきます。(以下、抜粋) 「ハードボイルドとは、他を恃(たの)まないこ…

80年前の全自動 『東京日記』(内田百閒)

1938(昭和13)年に発表された、内田百閒先生の『東京日記』、岩波文庫のカバーでは、「東京幻想紀行」と紹介されています。東京各地での「夢の中のような、変な出来事」がいくつも書かれていて、漱石先生の『夢十夜』のような世界が広がっています。 特に面…

曼珠沙華

前庭に、曼珠沙華が咲きました。植えているわけでもないのに、勝手に咲いてくれるので、いかめしい名前とは裏腹に、優しい花なのでしょうか? ところで、私の好きな俳句の中で、曼珠沙華を詠んだ俳句は、 つきぬけて 天上の紺 曼珠沙華 山口誓子 いつの日か…

我が青春の「壱錢洋食」

就職して1年目の冬、職場の先輩に飲みに連れて行ってもらった帰りに、祇園で食べた壱錢洋食。祇園ではありますが、当時は半分屋台のような小さな店で焼いていて、「こんなんが美味いんか?」と疑いつつ食べましたが、甘辛いソースと半熟玉子の相性がぴった…

昔なつかし相合傘♡ 『墨東奇譚』(永井荷風)

昨日は、午後から急な雨に振られ、相合傘をしたい気分になりました。相合傘って言葉自体、最近ほとんど聞かなくなりましたが、80年ほど前に永井荷風さんが書いた『墨東奇譚』に、突然雨が降ってきた後の、相合傘のシーンがあります。(「墨」にはさんずい偏…

サツマイモの試し掘り

試しに掘ってみたサツマイモ、ツルナシインゲン(約10センチ)と並べてみると、まだまだ小さいですね。次の日曜日に、近くの山に行って、リスなど小動物のエサとして置いてくる予定です。

谷崎さんの地獄変 『一と房の髪』(谷崎潤一郎)

芥川さんの『地獄変』は、地獄の絵を描くために、自分の娘が焼死させられる場面を見た絵師の話。 谷崎さんの『一と房の髪』は、大正末期の横浜を舞台に、一人のロシア人女性を三人のハーフの男性が取り合うという設定で、関東大震災に被災した時に、女性が三…

終戦直後の大阪 『世相』(織田作之助)

新潮文庫の「解説」によると、昭和21年に発表され、織田さんの流行作家としての位置を確定的なものとする契機となった作品とのこと。 主人公の「私」は作家であり、戦中から終戦直後にかけての時期の、「小説の題材」を集める様子そのものを「小説の題材」に…

新婚夫婦の外食 『阿呆者』(車谷長吉)

『阿呆者』の中に、長吉兄いの新婚当時のことを書いたエッセイがあります。 48歳の時に49歳の女性と結婚した長吉兄いですが、奥さんはすぐに友達数人と20日間ほどフランスに行ってしまったとのこと。(前々から約束していたそうです。)彼女の帰国後は、出雲…

オヤジ炸裂!洋子姐さん 『鰻にでもする?』(平松洋子)

平松洋子さんの「食」に関するエッセイ集『鰻にでもする?』。洋子姐さんの見事なオヤジっぷりが表現されています。たとえば、・・・(以下、いい加減なまとめ) ①骨付きの肉は両手で持って、かぶりつくのがおいしい食べ方。(「ハーモニカ」というそうです。な…

そして悲しき芥川賞・・・ 『阿呆者』(車谷長吉)

エッセー集『阿呆者』の中に、芥川賞や直木賞を受賞した作家に関する悲しい(?)話が書いてあったので、適当にまとめておきます。 ①芥川賞や直木賞などの文学賞をもらっても、すぐに書けなくなる作家が多い。 ②書けなくなった作家を、各出版社の編集者は「…

文学は恐ろしい!? 『阿呆者』(車谷長吉)

2009年発行の長吉兄いのエッセイ集『阿呆者』。いやはや、毒の強い文章群です。その中に、直木賞を受賞した作品(『赤目四十八瀧心中未遂』)を書き上げた時のことが書かれています。(以下、抜粋) この原稿を書き上げた瞬間、私の精神は異常に見舞われ、床…

泥水から咲き出る蓮の花 『赤目四十八瀧心中未遂』(車谷長吉)

平成に入ってから発表された小説、久しぶりに読みましたが、昭和50年代という設定で書かれているので、懐かしい感じがしました。(「電話ボックス」が、重要な役割を持ったりするし。)「普通の生活」を嫌悪してサラリーマンを辞めてしまった主人公には、あ…

読売がマルクス?(9月23日「読売新聞」)

本日の読売新聞の書評欄で『マルクス 資本論』(角川選書)という本が紹介されていてびっくり(*_*)。しかも「記者が選ぶ」というコーナー。一瞬、間違って朝日新聞を買ったのかな?と思ってしまいました。紹介文の中で、印象的な部分を抜粋しておきます。(…

意外と常識的? 『初期仏教』(岩波新書)

今年の8月21日に発行されたばかりの岩波新書『初期仏教』。サブタイトルは「ブッダの思想をたどる」。最新の研究をもとに、タイトル通り、ブッダの思想を厳密にたどった本です。この本を読んで、初期の仏教は、念仏でも修行でもなく、「生き方」ということに…

美味しさ炸裂!平松ワールド 『久しぶりの海苔弁』(平松洋子)

すっかりお気に入りになった平松さんのエッセイ集。食に関する豊富な話題に感心しますが、「ニラを細かく刻んで入れただけの味噌汁」「芽と根を取ったもやしだけのもやし炒め」など、実用的な内容もあります。さらに、本に関する話題もあり、車谷長吉さんの…

織田作のその他の作品群

岩波文庫『夫婦善哉 正続 他十二篇』(織田作之助)を、本日図書館に返すので、「他十二篇」の中で、印象に残っている作品を、記録しておきます。 ①「雪の夜」・・・別府に流れて行った破滅型の夫婦の悲惨な話。 ②「雨」・・・秀才かつ美少年でありながら性格が悪…

大丈夫なのか?週刊PST

週刊PSTの最新号のグラビアに載った女性が、「自分は知らされてなかった」と言っていることを、たまたまネット上で知りました。真相はどうなのか分かりませんが、そんなことが本当にあるとしたら、大問題だと思います。こういう被害を受けた場合、どうすれば…

華族に生活保護!? 『公家たちの幕末維新』(中公新書)

明治になり、華族という地位を与えられたお公家さんたち。特権階級のようですが、無職の人も多かったようで、お金ほしさに危ない話に乗ってしまったり、返す見込みもないのに大金を借りて首が回らなくなってしまった人も出てきたそうです。そこで、右大臣岩…

織田作の描いた幕末 『蛍』(織田作之助)

今日は、織田作之助の作品集と『公家たちの幕末維新』という2冊の本を並行読みしていたのですが、織田作の作品集の最後にある『蛍』という小説を読んでびっくり!舞台が伏見の寺田屋で、時代は幕末。寺田屋事件や坂本龍馬が描かれているのです。全く関係ない…

お公家さんが過激!? 『公家たちの幕末維新』(中公新書)

今年の7月に発行された中公新書『公家たちの幕末維新』の中に、江戸城での公家と武士の話し合いが描かれています。『続再夢紀事』という本に書かれていたことらしいのですが、公家側は京都から勅使として江戸に行った三条実美と姉小路公知。対する武士側は一…

織田作之助の別府もの

岩波文庫『夫婦善哉 正続 他十二編』には、別府を舞台とした小説として、「雪の夜」「湯の町」が載せられています。「雪の夜」は、破滅型の主人公夫婦の最底辺の生活を描いていて、読んでいてツラいのですが、「湯の町」は、珍しく新聞記者が主人公で、安心…

続編があった!「夫婦善哉」(織田作之助)

2013年発行の岩波文庫『夫婦善哉 正続 他十二編』には、「続 夫婦善哉」が載せられています。これに関する説明が「解説」に書かれているので、抜粋しておきます。(以下、抜粋) 「続 夫婦善哉」は、作者の生前に発表されなかった小説である。改造社の山本実…

復活!北リアス線 『ステーキを下町で』(平松洋子)

『ステーキを下町で』は「食」に関するエッセイ集ですが、発行が2013年。震災から間もない時期に、三陸にウニ弁当を食べに行った内容のエッセイもあり、その中で、三陸鉄道の望月社長の言葉が紹介されています。(以下、抜粋) (震災後、一部区間の)運行を…

イスラームと石油(『物語 アラビアの歴史』「おわりに」より)

『物語 アラビアの歴史』の「おわりに」の中で、筆者はイスラーム化と石油の影響について書いています。(以下、抜粋) ①メッカとメディナが位置するヒジャーズ地方だけはイスラーム化の恩恵を被り、巡礼者の増加やイスラーム政権の保護によってそれなりに潤…

芸能人との結婚! 『NANA』(矢沢あい)

人気ミュージシャンの男性が一般人の女性と結婚し、彼女の実家ですき焼きを食べる! なさそうでもあり、ありそうでもある、面白い設定です。

散財夫とDV妻 『夫婦善哉(めおとぜんざい)』(織田作之助)

平穏そうなタイトルとは裏腹の、とんでもない内容だったのですね。略奪婚から始まり、商売で儲けが出るたびに花柳界で散在する夫。何日ぶりかで帰ってきた夫を折檻する妻。離婚しなかったのが不思議です。こんな夫婦、戦前の大阪ミナミでは普通だったのです…