ストックホルム症候群? 『大人は愉しい』(ちくま文庫)

 内田樹氏と鈴木晶氏の「メル友交換日記」という形式の『大人は愉しい』という本、哲学や心理学の用語が出てきて、私にとっては「愉しい」だけとは言えませんが、興味深い考え方がいろいろ書かれています。その中で、鈴木氏からのメール、(以下、抜粋)

 湾岸戦争では最初、「極悪非道なイラク人が無垢なクウェート人を襲った」のが戦争の発端であった、という物語が流布しました。その後、クウェート人っていうのはけっこうひどいやつらで、貧しいイラク人に対してぜいたくな暮らしを見せびらかし、ほとんど戦争を挑発していた、という話が流れてきました。どちらも半分真実で、半分は物語でしょう。(中略)
 映画に話を戻すと、『狼たちの午後』というアル・パチーノ主演の映画は、実話にもとづいているそうですが、銀行員たちが(そして観客も)銀行強盗に入った若者たちにだんだん感情移入していくという話でした。こういうのを、心理学で「ストックホルム症候群」といいます。アメリカのカリフォルニアで起きたパトリシア・ハースト誘拐事件がその典型例です。被害者が、誘拐グループにだんだん共感をおぼえてしまい、とうとう彼らのシンパになってしまったという事件です。(抜粋、終わり)

 映画をほとんど観ない私ですが、このような観方ができると、面白そうですね。