主人公はメイド?『つゆのあとさき』(永井荷風)を読んで

 今から87年も前に書かれた小説で、昭和初期の銀座のカフェーの女給が主人公です。カフェーの女給って、メイドカフェメイドさんのようなものか、と思っていました(行ったことはありません)が、この小説の主人公は、実際は娼婦(私娼)で、いろんな男と関係する人物として描かれています。登場する男性も、正妻を持ちながら、毎晩のように別の女と関係する人物が描かれていて、「なんやこいつら」といった感じです。
 なお、岩波文庫の解説に、意外なことが書かれていたので抜粋しておきます。(以下、抜粋)

 (荷風は)一種独特の封建的女性観を身につけていた。
 それは性的交渉をする相手は、絶対に玄人に限り、素人の女性には手をつけない。つまり、女性は金で買うべきであって、同じ階級の女性と対等の恋愛をすることは、罪悪であるという、今日のモラルとは正反対の倫理観を抱いていた。