時代劇へのつなぎ? 『冠弥左衛門』(泉鏡花)

 鏡花さんの実質的な処女作。時代劇映画の製作が始まる15年も前に書かれた作品ですが、歌舞伎・浄瑠璃を意識し、舞台で演じられることを期待して書いたと思われます。勧善懲悪ではありますが、「善」の側の動きがまどろっこしくて、いらいらします。(具体的には、「善」側の女性が、マルキド・サドも顔負け(?)の残酷な殺され方をすることなど。)新聞小説として書いたそうなので、引き延ばす必要もあったのでしょうね。