差別を生んだ優生学 『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書)

 1882年、排華法という法律によって、中国人移民労働者が全面禁止になり、すでにアメリカに在住している中国人には、身分証明書の所持が義務付けられたとのこと。さらに、同じ年に一般移民法も制定され、「白痴、精神異常者、犯罪者、および公共の負担となる恐れのある者」の入国も禁止されたそうです。(以下、抜粋)

 中国人問題に端を発するこうした「国民」管理の根底にあったのは、結婚、出産、健康といった個人の「生」に国家が介入、コントロールしようとする思想である。ミシェル・フーコーはこれを「生=権力」と呼び、近代の権力の核心にあるものと考えた。
 そうした権力に根拠を与えたのは、人権主義と優生学という二つの思想であった。
 ヨーロッパにおける人権理論の先駆者であったゴビノーが、人種混交を文明の「退化」とみなしたことは前章でふれた。そして各国は、都市の貧民や労働者階級の内部に宿る、目に見えない「退化」の兆候を炙り出すことにも躍起になる。混血、性的倒錯者、障害者、白痴、ユダヤ人、同性愛者、アナーキストなど、「内なる他者」というもうひとつの人種の組織的排除が目指されることにもなったのである。(中略)
 アメリカは、まさにこの優生学の中心地となった。(抜粋、終わり)

 近代化って、あまりいいことばかりでもないのですね。(というか、むしろ逆かも。)