期待できる未来 『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書)

 黒人やアジア人に対する差別など、気が滅入る話が多かった『移民国家アメリカの歴史』ですが、後半になって、やや希望の光が見えてきたように感じました。(以下、印象に残ったことを適当にまとめておきます。)

①太平洋戦争が始まると、日系アメリカ人は戦時強制収容所に入れられた。
②収容所では「忠誠登録」が行われ、「忠誠的」日系人は、兵士として激戦地に送られ、多くの日系人兵士が死傷した。
③「不忠誠者」と見なされた日系人は、別の収容所へ移送された。
④1988年、レーガン大統領は、戦争中に立ち退き・強制収容を受けたすべての生存している日系人に対し、公式に謝罪し、一人につき一律二万ドルの補償金を支払うことを決定した。
日系人が④のような扱いを受けたのは、マジョリティである白人保守派にとって、白人優位の社会秩序を保つうえで、日系人は、不平を言わず、耐え忍びながら成功者となったモデル・マイノリティだったからだ。
⑥2001年9月11日の同時多発テロの後、アラブ系住民への包囲網が狭まったが、日系アメリカ人は、先頭を切って彼らに救いの手をさしのべた。
アメリカの人種別移民分布の予測では、21世紀半ばには、アジア系が他を抜いて最大になり、彼らがアメリカの差別を撤廃する希望の星になることが期待される。(現在活躍中のアジア系アメリカ人も多い。)(まとめ、終わり)

 あと、日系人として初めてアメリ連邦議会下院議員となったダニエル・イノウエが、1959年に来日し、岸信介首相に対して、「いつか日系人が米国大使となる日が来るかもしれません」と言った時の、岸首相の答えを抜粋しておきます。(以下、抜粋)

「日本には、由緒ある武家の末裔、旧華族や皇族の関係者が多くいる。彼らが今、社会や経済のリーダーシップを担っている。あなたがた日系人は、貧しいことなどを理由に、日本を棄てた「出来損ない」ではないか。そんな人を駐日大使として、受けいれるわけにはいかない。」(抜粋、終わり)

 岸首相こそ、「出来損ない」だと、私は思いました。