「健康」の新しい定義 『安楽死・尊厳死の現在』(岩波新書)

 『安楽死尊厳死の現在』の終章には、「健康とは何か」について書かれています。
 WHOは「健康」を、「単に疾患がないとか虚弱でない状態ではなく、身体的・心理的・社会的に完全に良い状態」と定義し、「完全に」を入れたことで、非常に扱いづらい定義になってしまっているとのこと。
 それに対して、オランダの女性医師マフトルド・ヒューバーらの国際的な研究グループは、新たな健康概念の開拓に取り組み、ある医学雑誌に、「社会的・身体的・感情的問題に直面したときに、困難な状況に適応し、対処する能力」という新しい健康概念を提起したそうです。(以下、筆者の解説より抜粋)

 疾患によってさまざまな問題を抱えていても、それに対処し乗り越えていく「立ち直り、復元力(レジリアンス)」としてとらえている。つまり、疾患があっても、さまざまな薬や補装具や機器、医療や介護の力などを支えにして、症状を和らげ(緩和)、気落ちすることなく人生を前向きに歩いて行けること、その力こそを「健康」としてとらえているのだ。(抜粋、終わり)

 「完全」でなくてもよいということで、少しホッとしたような気がします。