借金の哲学? 『直木三十五伝』
宗一には、借金について彼なりの哲学があった。ひとつは高利貸からしか金を借りないこと。もうひとつは、借金とりから逃げないことである。長い間の貧乏暮らしに鍛えられ、金がないことを苦しいと感じたことは少ない。貧乏もいいものである。人間は貧乏だからといって、かならずしも不幸とはかぎらない。金がないと、身軽だし、なにくそという反抗心が湧いてくる。入ってきた金は使い切る。貧乏が嫌なら勉強してもっといいものが書けるように努力すればいい。(抜粋、終わり)
これほどの境地に至るには、かなり豊富な貧乏経験が必要でしょうね。それにしても、三十五というペンネーム。31歳の時の直木三十一から始まって、年齢とともに三十五まで数字を増やしていったなんて、冗談のような話ですね。