成績から見た歴史 『なぜ古典を勉強するのか』

 いくつかの随想的文章からなる本ですが、「成績という文化」が面白かったです。(以下、適当にまとめておきます。)

三島由紀夫は、東大法から大蔵省に入った超エリートと思われているが、実際はそれほど成績がよかったわけでもなく、本人は隠していたが、旧制一高・日本銀行には落ちていた。(大蔵省も、当時はまだ入りやすかった。)
森鴎外が陸軍の軍医になったのは、成績では東大に残れなかったからである。
③総じて、作家的知性や感性と学校の成績とは相性が悪い。
長州閥の陸軍は明治で終わり、以後の陸軍は、徹底した成績主義で人間を抜擢した。
⑤超エリート集団である陸軍の中枢が政治や戦争を動かしたが、結果は悲惨きわまる敗戦であった。(まとめ、終わり)

 特に⑤に関して、著者の前田雅之氏は、暗に「成績の悪い人たちが陸軍の中枢にいたら、結果はもっと悲惨だっただろう」といったニュアンスで書かれていますが、超エリートであった人たちは、一般の兵士を見下して、駒として扱ったという面もあったのではないかと、私は思いました。