10カ月かけてやっと読了 『失われた時を求めて 12』(岩波文庫)

 第12巻のタイトルは、「消え去ったアルベルチーヌ」。巻末にある「訳者あとがき」の中に、読了者の慰めになるようなことが書かれていました。(以下、抜粋)

 『消え去ったアルベルチーヌ』は、恋人を失った悲嘆が少しずつ癒えてゆく心中のできごとにのみ数百ページを費やした特異な文学である。これを読了した人は、プルーストの文学がレアリスム小説の対極にあって、いかに豊饒な精神のドラマを展開しているかを実感したことであろう。この観点からすると本篇は、精神生活という「われわれが並行して送っているさまざまな人生のなかで、もっとも波乱万丈で、もっともエピソードにあふれた人生」を隈なく描いている点で、『失われた時を求めて』のなかで最もプルーストらしい巻といえるかもしれない。(抜粋、終わり)

 とりあえず、残りはあと2巻。近所の本屋へ、昨年末に出たばかりの第13巻を注文しに行ったところ、「取り寄せるのに時間がかかるかもしれませんよ」と、暗に「ネットで注文しろよ」とでも言いたげな口調で言われました。12巻の余韻にひたっていたい私としては望むところで、喜んで了承し、その後自宅でお祝いのビールを飲みました。