中内さん 偉い! 『戦争体験と経営者』(その2)

 ダイエー創業者の中内㓛さん。1980(昭和55)年に京都国際会館で開催された関西財界セミナーにおける彼の発言に感動しました。議長役である住友金属会長が、憲法改正ソ連を仮想敵国とした防衛力の強化、徴兵制の必要性などを述べたことに対して、誰もが沈黙するなか、中内さんが「異議あり」として発言した内容を抜粋します。(以下、抜粋)

 あなたは防衛力を増強しろとおっしゃいますが、核時代の現在、どれだけの軍備があれば日本は守りきれるというんですか。いまや核ミサイルの時代です。(中略)
 核戦争になれば、戦闘機も戦車も軍艦も、役に立たないとは言いきれないが、そんなものいくらあっても無に等しい。戯れ言を言わないでいただきたい。そんなことするよりも、ソ連を刺激せずに、ソ連と仲よくする努力をすることのほうが大切じゃないんですか。
 それに、憲法改正して徴兵制を導入するなんて、それこそ言語道断だ。そんなことをしたら、日本はアジアをはじめ世界から袋叩きにあい、孤立してしまいますよ。
 かつての日本は、大東亜共栄圏建設の美名のもとに侵略の過ちを犯した。戦争中、朝鮮半島、中国、アジア各国を侵略したことを知らないとは言わせない。(中略)あなたは日本をまたあのいまいましい時代へ引き戻そうというんですか。とんでもないことだ。中国に対して、日本はどうやって、軍備拡張の正当性を説明するんですか。
 太平洋戦争は、資源の争奪によって起こった戦争です。戦争になれば、あなたの会社は軍需産業として儲かるでしょうが、われわれはたまったもんじゃない。(抜粋、終わり)