明治のクロスドレッサー 『秘密』(谷崎潤一郎)

 谷崎さんの初期の短編で、発表は1911(明治44)年。
 主人公の「私」が、女装をして毎晩街をうろつくという、すばらしい内容です。前半は梶井基次郎の『檸檬』に似ている感じがしましたが、梶井さんがパクったというわけではなくて、「現実逃避」という面が似ているのだと思います。後半は、ある女性の居場所を突き止めようとする内容なので、ちょっと探偵小説っぽいのは、この時代の流行なのかな?と思いました。