文化にもってゆく京都 『もの食う本』(木村衣有子)

 いろいろな本に書かれている「食」に関する話を紹介してくれる『もの食う本』。その中で紹介されている『ひとり飲む、京都』という本に書かれている、イノダコーヒ京都。(抜粋した文章を含む抜粋で、わかりにくいと思いますが、以下、抜粋)

 <湯を沸かす大きな機器、深い寸胴、大小様々の真っ白な琺瑯水差し、カップを温めるバットなど、コーヒーひとつにも様々な道具がそろい、ミルクを小分けして冷やし、コーヒーをネルで淹れ、長い食パンを慎重に八枚に切り、とけっこう仕事はあるものだ。仕事のすべてをつねに四囲から見られるのは緊張と清潔が欠かせないだろう。コーヒー一杯にここまでおおげさに神経を使い、仕事を見せ場にする喫茶店は他に知らず、京都のコーヒー文化を感じる。と言うよりも「文化」にもってゆく意識を思う>
 この、最後の一文が、流石なのだ。その前までのくだりのような感想を語る人は少なくない。が、ここまで気付いてもらえたならば、京都の喫茶店で働いていた私はうれしい。ひとつひとつの工程、道具を決しておろそかにしない、手を抜かない。大真面目にやる。お客のほうも、その生真面目さを受けとめ、大事にしてくれる。それだから<「文化」にもってゆく>ことができたのだ。(抜粋、終わり) 

 イノダコーヒも、そのすごさを書いた人も、そのすごさを書いた人の文章のすごさに気付いた木村さんも、すごいと思いました。