英語は英語で? 『英語教育幻想』(ちくま新書)

 「英語は英語で学んだほうがよい」というのは幻想であると、『英語教育幻想』の著者である久保田竜子先生は断言します。(以下、抜粋)

 これはある種の同化主義であり、言語的少数派が多数派社会で生きていく中で強要されてきた概念です。歴史的に少数派は言語だけでなく文化も奪われてきました。これは、日本のアイヌ琉球民族も含め、世界各地の先住民族たちがたどってきた歴史です。日本の近代化における標準語運動でも、方言撲滅運動が起こり、教室の中で方言を使用することが禁止されました。沖縄などで使われた方言札は一種の罰則で、方言を使うと首にかけられ、それをはずすためには次に使った子どもを見つけなければなりませんでした。(抜粋、終わり)

 「英語の授業は英語で行うべき」という、現在のあり方に真っ向から反論する久保田先生は、応用言語学がご専門で、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の教授をしていらっしゃいます。抜粋した部分は、「思想的」な反論ですが、この部分の後に、「英語だけで英語の授業を行う」ことは、あまり効果的ではないことが、研究の上でも明らかであることが書かれています。
 『英語教育幻想』という本、著者の久保田先生ご自身が、ネイティブスピーカーではなく、しかも女性であるという点で、英語の先生として差別を味わった体験も踏まえながら書かれているので、説得力がある内容でした。