貧乏文士 『痩我慢』(車谷長吉)

 エッセイ集『錢金について』に収められている『痩我慢』に、文士の経済状況が書かれていました。(以下、抜粋)

 文士と言うと、時々新聞や雑誌に名前が出るので、一見花のある生活をしているように思われる向きもあろうが、併し私の如きしがない私小説作家は、全身全霊を傾けて原稿を書いても、年収百萬円にも満たず、やむなく週二日、某会社で嘱託勤めをさせてもらい、元よりそれでも喰うては行けないので、校正の内職をし、あとは嫁はんにぶら下がっているというのが実際である。(抜粋、終わり)

 なお、このエッセイには、漫画は大嫌いだが、つげ義春氏の漫画だけは好きだということが書かれています。つげ氏を褒めた言葉が本人に伝わったこと、及び、それに伴ってわかった意外な事実(つげ氏がそれまでの十年間に買った本は、車谷氏の『鹽壺(しおつぼ)の匙(さじ)』だけであること)なども書かれていて、興味深い文章でした。