お金にまつわるアンソロジー 『大貧帳』(内田百閒)

 百閒先生の「貧」に関する話を集めた『大貧帳』(中公文庫)、印象に残った点を適当にまとめておきます。

①学校を3校掛け持ちしていた時にも、いろんな事情で、お金に困らなかった月は全くなかった。
②お金を返すために、別のところから借りるということを繰り返す生活であった。
③大晦日を乗り切るために、出版社から前借したが、やっぱり作品が書けないこともあった。
④家族と生活することができなくなり、安い下宿で暮らしていたこともあった。
⑤借金取りから逃げ回り、金策のために東京を離れることもあった。

 なんとまあ、壮絶な借金生活ですが、百閒先生には精神的に余裕のある時期もあり、「質に入れるものが家にあることは、余裕があるということだ」などと書いたりもしています。(その作品の中で、ちり紙がなくなり、鼻がかめなくて困ったことも書かれているのですが。)