ファミレスよりも大衆食堂! 『大衆食堂パラダイス!』(ちくま文庫)

 ちくま文庫の『大衆食堂パラダイス!』には、著者のエンテツさん(遠藤哲夫氏)の、大衆食堂への限りなき愛が満ち溢れています。(以下、抜粋)

 都会の広大な大衆食堂空間の中央で、ちょっとだけ流行り、華々しく騒がれた「洋」のファミリーレストランファストフード店だが、わずか三十年で苦境に陥り、丼物や麺類に手を出したり、牛丼チェーン店は定食もやったりと、けっきょく大衆食堂の大衆食メニューをこえられない。逆に大衆食堂は、新しい大衆食のハンバーグを、和風ハンバーグから豆腐ハンバーグなるものまでこしらえて、のみこんでいる。
 不死身の大衆食アメーバー、どうだまいったか!おれは、気分よく眺めている。伝統の日本料理や懐石料理は滅んでも、外国料理が進出してこようと、近代日本食の普通を歩む大衆食の伝統は永遠である。(抜粋、終わり)

 ちなみにこの本は、めっちゃ美味しい店を紹介するグルメ本ではなく、普通の味の料理を出すだけなんだけれども、昭和を引きずっているような庶民の店を紹介している本です。東京で、そのような店が失われる経過が書かれていた部分には、心の底から悲しみを感じました。