カントのメッセージ(11月17日「朝日新聞」)

 本日の朝日新聞の「政治季評」というコーナーで、早稲田大学教授の豊永郁子氏が、「ホッブズとカントのメッセージ」というタイトルの文章を載せていらっしゃいました。特に、カントに関する部分が興味深かったので、抜粋しておきます。(以下、抜粋)

 カントの論理によれば、(中略)価値がないと思われる生を生きる行為こそ尊い。その行為が、生きるという義務に従うことの道徳的価値を持つからだ。
 カントの議論では、義務にもとづく(従う)行為には格別の意味がある。それは単に義務に適うだけの行為とは違い、他の何のためでもなく、ただその義務のためだけに行われる行為であり、人間に純粋な「善い意志」が存在することを示す。生きるという義務にもとづく行為は、従って、生きることの意味や目的が見出せない場合にこそ、行われ得ることになる。老いや病気や障害や大きな不幸によって、生きることが苦痛である、あるいは人生に希望を持つのが難しい、そう思っていたり見えたりする人たちの生きる姿が、我々に深い感動を与えることがあるのは、このためだ。生きるという義務を敢然と果たす彼らの姿は、道徳的価値に輝くのである。(抜粋、終わり)

 腹の底から納得ができたわけではありませんが、何となく「生きる勇気」を与えてくれる考え方だと思いました。特に、「○○のために□□する」という、「目的」重視で疲れてしまっている現代の私たちにとっては、新鮮な考え方だと思います。