格差の起源 『アンダークラス』(ちくま新書)

 昨年の12月に発行されたばかりの『アンダークラス』という本に、現代日本における格差の起源について書かれていました。現代日本において、もっとも貧困に陥りやすいのは、パート主婦以外、つまり男性と単身女性の非正規労働者たちであり、なかでももっとも苦しい状況にあるのは、50歳代以下の比較的若い世代の人々とのこと。これらの人々が、貧困と隣り合わせの生活に導かれてきた主要な起源は、バブル経済期にあったそうです。(以下、適当にまとめながら、抜粋)

 1986年前後から、地価と株価の急上昇が始まって、日本はバブル経済の時期を迎えた。株価は85年から89年の5年間で2.97倍に上昇した。地価は少し遅れて上昇を始め、89年の時点では1.28倍、91年には1.62倍となり、東京圏に限れば平均でも2倍以上、都心の一等地は5-6倍にもなった。大企業の資産は増大し、設備投資が盛んになって、景気はよくなった。
 雇用も拡大したが、問題はその中身である。オイルショックのあと雇用は低迷し、1978年(1-3月期、以下同じ)には有効求人倍率が、パート労働者で0.93倍、パート以外の一般労働者で0.52倍にまで低下していた。その後、次第に回復するのだが、一般労働者の求人倍率がわずかな回復にとどまったのに対して、パートの求人倍率は上昇を続け、80年には1.43倍(一般労働者0.75倍)、85年は1.53倍(同0.64倍)、89年には3.75倍(同1.04倍)に達した。(『労働経済白書』2005年)。企業はコスト削減のため、労働力の調達を非正規雇用に頼るようになっていたのである。その結果、85年から90年の間に、正規労働者が145万人の増加にとどまったのに対して、非正規雇用者は226万増え、役員を除く雇用者の20%を初めて突破した。(中略)非正規雇用者はその後、2005年までの20年間で、年平均約47万人ペースで増え続けた。(抜粋、終わり)