知性断片化の危機回避(1月4日「日本経済新聞」)

 昨日の「日本経済新聞」で最も印象に残ったのは、「経済教室」欄の猪木武徳氏(大阪大学名誉教授)の文章です。猪木氏によると「多数の支配」による民主政治と技術革新により、社会の連携が弱まり、生産現場でも日常生活でもフェース・ツー・フェイスの接触の機会が奪われたとのことですが、(以下、抜粋)

 こうした傾向がいかに大きな長期的ロスを生み出すかを強調したのは、IT時代の新技術を代表する人物、スティーブ・ジョブズだった。
 ジョブズはこうした技術変化と専門化の進行に伴う「知性の断片化」現象の危機を見抜いていた。ジョブズは「技術だけでは不十分だ。リベラルアーツ(教養)と結び付かねばならない」と強調し、映像制作会社ピクサーの職場にも専門職種の異なる人材が必ず出くわすような空間を設計した。彼がデルモンテの3つの古い缶詰工場を買い取りデザインした職場空間は、フェース・ツー・フェースの出会いを目的としたものだった。この認識は日本の教育と研究に関わる人々の間でもっと注目されてしかるべきだろう。(抜粋、終わり)

 新技術を開発しながらも、その弊害も見抜いていたというジョブズって、すごい人だったのですね。