詰め込み教育のすすめ 『忘却論』(ちくま文庫)

 『内田百閒集成6』の『忘却論』の中で、ドイツ語教授の百閒先生は、詰め込み教育を実行してきたことを書いていらっしゃいます。(以下、抜粋)

 気の弱いのが、先生そんなに詰め込まれても、じきに忘れてしまいますと訴える。
 構わない。覚えていられなかったら忘れなさい。試験の答案を書くまで覚えていればいいので、書いてしまったら忘れてもいい。しかし覚えていない事を忘れるわけには行かない。知らない事が忘れられるか。忘れる前には先ず覚えなければならない。だから忘れる為に覚えなさい。忘れた後に大切な判断が生じる。語学だけの話ではない。もとから丸で知らなかったものと、知っていたけれど忘れた場合と、その大変な違いがいろいろ忘れて行く内にわかって来るだろう。(抜粋、終わり)

 冗談のようでありながら、何か「深いもの」も含まれているように感じます。