必要なのは「無知のヴェール」 『アンダークラス』(ちくま新書)

 『アンダークラス』(副題は「新たな下層階級の出現」)の終章「『下』から日本が崩れていく」に、印象的なことが書かれていたので、抜粋しておきます。(以下、抜粋)

 現代リベラリズムの基礎を築いた倫理哲学者のジョン・ロールズは、望ましい社会のあり方というものは、自分の地位や所属する階級・身分・性別などの属性、さらには所有する資産や身につけている能力などについて、何も知らないという条件の下で考えなければならないと説いた。なぜなら、こうしたことがらについて知っていたならば、人は自分の属性や資産、能力などに鑑みて、自分に有利になるような社会を構想してしまうにちがいないからである。このような条件のことを、ロールズは「無知のヴェール」と呼んだ。そしてロールズは、「無知のヴェール」をまとって考えるなら、人々は「自然の運や、偶然の社会状況によって、何人も有利になったり不利になったりするべきではない」ということに合意するだろう、という。なぜなら人々は、もしかすると不運にも自分は、無一文で、能力もなく、助けてくれる人もいないという、この世でもっとも不遇な立場に置かれているかもしれないからである。(抜粋、終わり)

 政治家の方々は、どうしても支持してくれる人たちの利益・意見を優先してしまうでしょうから、有権者である私たちが、可能な限り「無知のヴェール」をまとって支持する政党を選びたいものですね。