死の直前の平穏 『硝子戸の中』(夏目漱石)

 『硝子戸の中』は漱石さんがお亡くなりになる前の年に、「朝日新聞」に連載した随筆とのことで、幼い頃の記憶などが書かれています。漱石さんは、幼い頃から神経質で、昼寝をしていると、よく変なものに襲われたとのこと。生後すぐに里子に出され、また連れ戻されるなど、不幸な幼年期を過ごしたせいかもしれません。
 ただ、全般的には穏やかな筆致で、過去を振り返っており、江戸の香りを残す東京の情緒など、興味深く読むことができました。
 ちなみに読んだ本は、中学の頃に買った「旺文社文庫」版で、「私の個人主義」という講演の記録も入って、定価110円でした。