延命中止で延命効果? 『安楽死・尊厳死の現在』(岩波新書)

 『安楽死尊厳死の現在』を読んでいて、気分が落ち込んできましたが、中には明るい(?)話題もありました。在宅医療・在宅での看取りに取り組んでいらっしゃる小笠原文雄医師が、『なんとめでたいご臨終』という本であげていらっしゃる例です。(以下、抜粋)

 小笠原医師のもとには、入院中の患者や患者家族から「緊急退院」の希望がしばしば寄せられるという。「緊急入院」なら説明は不要だが、「緊急退院」という言葉を聞くことはほとんどないだろう。これは、最期が近づいたから、病院ではなくて家で最期を迎えたいので、すぐに退院させてほしいという希望である。重篤な患者の退院を、病院はふつう許可しない。そこで小笠原医師がすぐに病院と退院調整を行い、自宅に連れ帰る。すると、いまにも死にそうだった患者の容態が持ち直し、しばらく自宅で平穏な日々を過ごすことができる例が多いという。
 入院中は高カロリーの栄養と水分を補給され、むくみでパンパンの状態になっていた人が、栄養と水分を適切な量に減らすことによって、状態がよくなってくるという。最期に近づいていく患者には、水分や栄養の過剰な投与はかえって負担をかける。そこで、患者の状態に適した量に減らしていくと、その結果、病院では「退院したら5日の命」と言われた人が、みるみる元気になって、退院してから5年経っても元気で暮らしている例もあるという。「延命治療」を中止したことによって、延命効果が出たのである。(抜粋、終わり)

 2025年問題を控え、「在宅」が増えて大変だと、よく言われますが、このような例を知ると、ちょっとほっとします。