屁理屈じじい 『内田百閒集成11』(ちくま文庫)

 『波光漫筆』という随筆に、日本郵船の嘱託として鎌倉丸という船に乗って横浜・神戸間を往復した時のことが書かれています。船の食堂の豪華なメニューを見て、百閒先生特有の屁理屈が炸裂します。(以下、抜粋)

 献立表を手に取って見ると、全く大変な御馳走であって、船の食堂は食い放題と云う事は聞いているが、こんなに食べられるものではない。その上私などの様にいつもお金で困り抜いている者は、献立に載っている凡そ三十種の御馳走がどれを食べてもお金に無関係であると云う点に張合い抜けがして、食べた丈後で困らないなら食べたって仕様がないと云う気もする。(抜粋、終わり)

 百閒先生って、素直に喜ぶってことができないんですかね。