目からウロコの本 『内田樹による内田樹』
ホロコーストは人間が人間に対して犯した過ちでした。それを神が人間に代わって赦すことはできません。もし、人間の犯した過ちを神が一つひとつただし、その償いをしていたら、人間はどうなってしまうのか。永遠に幼児のままでいることでしょう。勧善懲悪の仕事を神にまるごと委ねてしまったら、人間は何もしないで、ただ神の裁定を待つだけでいいことになる。目の前で不正が行われていても、自分でそれを防ぐ必要も、咎める必要もない。自分よりもはるかに手早く、正確に神が悪人を罰してくれるはずだからです。目の前に飢えた人、渇いた人、抑圧されている人がいても、彼らに手を差し伸べる必要はない。神がすぐに彼らを救ってくれるはずだからです。神が完全に支配する世界では、人間は倫理的である必要がなくなる。判断する必要も、思考する必要さえなくなる。(抜粋、終わり)
なかなか厳しい神様だと思いますが、人間の「成熟」を促すというのが神様の役割だということらしく、内田先生の原点はここにあるのかな? と思いました。