無理な設定の幻想小説 『雪霊記事』『雪霊続記』(泉鏡花)

 雪のため、汽車が武生(越前の府)から先に行けなくなって、仕方なく武生に宿をとることになった主人公が、昔世話になったお米さんという女性を訪ねて虎杖(いたどり)の宿に歩いていこうとする内容で、1921(大正10)年に発表された小説ですが、虎杖の宿は今庄よりも先にあり、しかも吹雪の中なので、物理的に絶対無理な内容です。①金沢生まれの作者が、隣県に対する中途半端な知識を元に書いたのか、②主人公の熱意を表現したかったのか、・・・私はおそらく①だと思いますが、さらにうがった見方をすると、ほとんどの読者は、武生も虎杖も知らないはずだから、それを逆手にとって(?)、風情を感じさせそうな二つのさびれた町を無理につなぎ合わせたとも考えられます。地元の住人の皆様にとっては、微妙な心境でしょうね。(超マイナーな作品なので、どうでもいいかも?)