文学は恐ろしい!? 『阿呆者』(車谷長吉)

 2009年発行の長吉兄いのエッセイ集『阿呆者』。いやはや、毒の強い文章群です。その中に、直木賞を受賞した作品(『赤目四十八瀧心中未遂』)を書き上げた時のことが書かれています。(以下、抜粋)

 この原稿を書き上げた瞬間、私の精神は異常に見舞われ、床と天井が逆さにひっくり返って、家が揺れはじめ、階段がエスカレーターのように動きはじめた。二月の末である。数日後、驚いた嫁はん(高橋順子)が浦和の悳(いさお)智彦精神科医師の許へ連れて行くと、私は強迫神経症に罹っていた。以来、六十三歳になった今日まで、病いは平癒しない。文学とは恐ろしいものだ。(抜粋、終わり)

 なお、長吉兄いによると『赤目四十八瀧心中未遂』は、枚数の関係から直木賞になったとのことで、芥川賞にこそふさわしいと思った私の感覚は間違っていなかったことがわかり、ちょっと安心(?)しました。