猫愛小説 『ノラや』(内田百閒)

 タイトルから内容が類推できてしまう小説は、あまり読む気がせず、『ノラや』も百閒先生の作品集を読む「ついで」として読んだのですが、印象的な作品でした。愛猫であるノラの失踪後の、百閒先生の悲しみが切々と書かれていて、猫を飼ってもいない私にまでその悲しみが伝わってきました。解説によると、当時百閒先生は68歳だったとのことで、「大のオトナが、たかが猫ぐらいでメソメソと・・・」という気もしますが、「大のオトナのメソメソ」を詳細に表現するという点では、プルーストの『失われた時を求めて』にも、つながるような気がします。