猫も大変! 『ノラや』(内田百閒)
『ノラや』の中に、百閒先生の飼い猫(元々は野良猫)ノラの、さかりの時の様子が書かれています。(以下、抜粋)
初めてのさかりがついた時は、その出這入りが頻繁で、猫のサアヴィスに起ったり坐ったりしなければならなかった。
そんな時でもノラは仲好しの靴屋の藤猫と一緒に行動している。よく喧嘩をしないものだと思うけれど、一匹の雌猫を挟むように坐り込んで、両方ともいい気持らしい。
一寸(ちょっと)でも手を出そうとすると雌が怒って大変な声をする。「何をするのさ、このいけすかない青二才だよ」と云って引っ掻く。ノラは鼻の先を引っ掻かれて帰って来て、家内に何か薬で手当をして貰った。
その時のさかりでは、ノラは恐らく得る所はなかったのだろうと思う。(抜粋、終わり)
当然かもしれませんが、雌猫にも、異性に対する「好み」があるのですね。