貧困からの脱出!? 『身辺と秋筍』(内田百閒)

 今まで読んできた百閒先生の作品には、貧困話が多かったのですが、ちくま文庫の『内田百閒集成9 ノラや』は猫話ばかりで、食事でも寿司を頻繁にとったりして、貧困から脱出した様子がうかがわれます。脱出できた理由については、『身辺と秋筍』という作品の中に、それとなく書かれています。(以下、抜粋)

 二十何年前、身辺の処理が溜まって溜まって、どうにもならなくなった丁度その時、亜米利加の敵機B29がやって来て、どっちへ向いているか、どう重なっているか、わからなくなったもろもろの大事な諸件をみんな焼き払って行ってしまった。
 もう一度頼んで、来て貰おうか。(抜粋、終わり)

 ちなみに、これを書いている時点で百閒先生が困っているのは、あちこちからいろんな物を贈られてくるのに、お礼の返事もできていないという、極めて憎たらしい理由です。それにしても、最後の一文は、現在に書かれていたら、炎上必至でしょうね。