格差社会の危機管理術? 『百姓一揆』(岩波新書)

 江戸時代の後半になると、将軍・領主による仁政だけでは凶作飢饉の状況を乗り切れなくなり、それを補完するものとして民間の富裕者による施行が比重を増してきたとのこと。例えば、松平定信が寛政元年(1789年)に出した貯穀令・郷蔵(ごうぐら)設置令について、(以下、適当にまとめながら、抜粋)

 幕府の財政負担は少なく村の富裕者がそのほとんどを負担する制度でありながら、必ずしも富裕者の損にはならない。なぜならば、郷蔵の存在は、飢饉などに激化する村内の矛盾(それは打ちこわしや一揆などの騒動に発展しかねない)を緩和し、村の安定という効果を期待できるからである。すなわち、貧窮にあえぐ窮民が、領主ではなく、富裕者に対して、施しを望むとともに怒りの矛先を向ける構造が、出来上がっているといえるのである。(抜粋、終わり)

 現代における格差の拡大も、このまま続けば富裕層の「損」になるかもしれないということを、社会的に影響力のある誰かに指摘していただきたいものです。日本の富裕層って、アメリカなどとは違って、自分の「富」を社会に還元しようとしない人が多いらしいですし。(京セラの稲盛さんなど、例外の方もいらっしゃいますが。)