病気が目出度い? 『忙中謝客』(ちくま文庫)

 『内田百閒集成19』の中の「沙書帳」という作品に、百閒先生の持病の一つである喘息について書かれています。先生の喘息は夏型で、秋には治まるとのことですが、(以下、抜粋)

 病気と雖(いえど)も年年の季節を間違えずに起こるのはお目出度い。持病がなおっていないのは持病だから仕方がないとして、その持病を去年一昨年又その前の何年来の儘(まま)に、季節をあやまたず起こす事の出来る私の身体は達者である。少なくともお変りはなくて何よりと思う。季節の病気は慣例であり恒例であり嘉例である。持病を起こして咽喉の奥をぜいぜい鳴らしながら、天行は健やかなりと思う。(抜粋、終わり)

 百閒先生のように考えることが出来れば、病気の苦しさも逃げていきそうですね。