サイバネティクスはファシズムの土台 『アナキズム』(岩波新書)

 サイバネティクスとは、「自動制御装置」と訳され、コンピュータとかAIのもとになった科学技術のことで、著者の栗原康氏は、現代では人間がサイバネティクス化されてしまっていると書いています。(以下、抜粋)

 ほんとは、どこの会社も自転車操業でやっていて赤字なんてあたりまえなのに、なんか数字をみせつけられると、ああ、そうですかってなっとくさせられちまう。だって、データをあつめてフィードバックをしたら、オレが障害物だったんだからってね。たぶん、自分の身体がサイバネティクスにもっていかれているこわさってのは、そういうことなんだとおもう。(中略)
 もともと、資本主義って、カネをかせいでなんぼだっていわれているから、はたらかない、はたらけないやつらが、テメエら死ねっていわれてディスられてきたわけだけど、それがさらに暴走していく。(中略)ああ、クビになった、ああ、仕事がみつかんねえ。ああ、オレさまは役たたずだって? ああ、ちがう、ちがう! よりよくなれ、よりよくなれ。そうだ、オレさまよりもつかえないやつがいるじゃないか。この社会の障害物を駆除するんだ。それができるオレさまはつかえるやつなんだ、生産性バンザイなんだよってね。(抜粋、終わり)

 サブタイトルは「一丸となってバラバラに生きろ」というこの本、最近読んだ本の中では一番「ぶっとんだ」本でしたが、生き方について重要な示唆を与えてくれる内容でした。大学院を中退し、37歳まで実家に引きこもっていたという著者の栗原先生、ありがとうね。